ロー・インピーダンス・ピックアップ・システムが組み込まれた楽器を除いた一般的なギター/ベースでは、ノイズを下げるために、弦をアース回路として使用してプレイヤーの体を使ってアースに落とす構造になっている。ギターの種類によっては、ブリッジやテイルピース部分にしっかりとアース線が取りつけてあるものも多いが、単に挟み込むように圧着しているだけのものもある。こういった構造のギターは、時間が経つとアース部分の接触が弱くなり、ノイズが大きくなってくることが起こる。エレクトリック・ギター/ベースのジーというノイズは、誰もが経験し、また好ましくないもの。今回は、楽器自体をカスタマイズしてノイズを下げるのではなく、楽器が本来備えているアース回路がちゃんと機能しているかのチェック、そして不測の事態を回避するための応急処置をお教えしよう。
まず、ギターをアンプに接続する。次に、大きめの音量に設定して、蛍光灯などのノイズを 発しやすいものを近くに置きながらノイズの出方を確認してゆく。
次の3つの状態のノイズ(この場合、シングルコイル特有の低いブーンというノイズではなく、高い音でジーとなる外来ノイズ)の量を比べてみよう。
- (A)両手をギター/ベースから離した状態
- (B)手で弦を押さえた状態
- (C)手でギターに差し込んであるプラグの外側を強く握った状態
3つともノイズの量が変わらないのであれば、その楽器は現状で組み込まれているアース回路がちゃんと機能している。従って、よりノイズを下げたいのであれば、新たなカスタマイズが必要となる。
次に(A)に対して(B)のノイズが減っているようには聞こえない、そして(C)が一番ノイズが小さく感じられる場合。この時は、本来ギターに組み込まれたアース回路がちゃんと機能していない。その理由は、ギター内部のアース線が外れてしまっているのかもしれないし、ブリッジ〜アース間を結ぶべき線は比較的に外れやすいので、それが外れてしまったり、圧着されていたものがずれてしまった場合などが考えられる。これは、アース回路を点検しながらワイヤリングを正すことで、弦を押さえた時に(C)の状態にまで改善することができる。具体的な方法はボディ内部のワイヤリングに関わってくることなので、次回にゆずることにするが、現場でどうしてもそのギター/ベースを使いたい時の応急処置を記しておこう。ギター弦や半田線のような電気を通す金属線を使って、ブリッジとギターに差し込まれたプラグの外側(どこでもよい)とを強く結んでやる。これでノイズ量は(C)の状態まで落とすことができる。
最後に(A)、(B)、(C)の順でノイズが減ってゆく場合。これは、一応アース回路は結線されているものの、経年変化やサビ等によって、アース回路(アース線)が完全には導通していない状態であることを示している。古いギターなどで時折見られるのだが、弦を押さえると少しはノイズが減ること、対象が古い楽器の場合が多いことなどから、壊れているという自覚がないまま、“古いギターは、ノイズが多い”と思い込んでいることもある。適切にアース回路をワイヤリングしなおしてやれば、弦を押さえた時に(C)の状態まではノイズ・レベルを下げることができる。応急処置に関しては、前記の項目と同じ技を使うことができる。
エレクトリック・ギター/ベースのエレクトロニクスについては、一定の知識や簡単な技術が必要になるが、実際にはさほど難しいものではなく、十分に理解さえすれば危険度もそれほど高くはない。次の機会には、ある程度順を追ってギター・トーンを考えた上でのジャックやポット交換、コイル・タップ・スイッチなどの簡単なバリエーションの追加、そしてピックアップ交換の手順、簡単なエレクトロニクスのトラブル・シューティング等に関しても考えてみたい。
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