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メンテナンスガイド

その4 調整に細心の注意が必要なモデル

 古いギターには、トラスロッドの構造や効き方に癖のあるものが多い。特に危険なのが、トラスロッドを回したことで、ロッド折れやフィンガーボード剥がれといったように、ギターが壊れてしまうことである。僕の個人的な意見だが、ギターやトラスロッドの構造、組み込み方がデリケートで、特に注意が必要なものを以下に列挙しておく。該当する楽器は、リペアマンやギター・テクニシャン等のプロフェッショナルな人以外は、手を触れるべきではないと思う。また、以下に挙げた楽器は、デリケートであることを記しているのであって、そのギターの備えたサウンドや楽器としての資質、魅力といったものとは関係がないことをお断りしておく。以下の楽器を大切に使いたい方は、多くの経験を積んできた信頼できるリペア・マンに相談しよう。

●1974〜83年にかけて製造された、ヘッド側からブレット型のトラスロッド・キャップを回すタイプのフェンダー・ジャズ・ベース。

●1970年代初頭から半ばにかけてのギブソン・ギター。

●1980年代以前のリッケンバッカー・ギター/ベース。

●1960年代以前のヘフナー・ベース。

●1970年代以前のモズライト・ギター/ベース。

●1970年代以前のグレッチ・ギター。

●1985年以前のマーティン・ギター。

※他にも、僕の知らないギターの特徴などをご存知の方は、教えていただけるととてもありがたいです。

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その3 実践・トラスロッド調整法

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 次に具体的なトラスロッド・ナットの回し方に入ろう。ここでは、まず一般的に見られることの多い順反り/つまり、弦のテンションによってネック自体がグリップ側からフィンガーボード側へと曲がってきたものを補正する方法を示すことにしよう。ネックが順反ってくると、それに伴って、弦高が高くなり、ハイ・ポジションの音が詰まるようになり、これが進行すると、音自体が出なくなるものもある(図C)。次に、順反ったネックのトラスロッド・ナットを、そのナットに合った専用レンチ、ドライバー等を使って時計回りに回す。全神経を手と耳に集中させながら、不測の反応が起こらないことを確認しながら作業を進める。一度にナットを回す幅は、45°からせいぜい90°までの範囲に留めること。この時、元の状態からネックのフィンガーボード面がどのように変化するかを正確に目でチェックする。おそらく、0〜0.2ミリ程度はフィンガーボード中央部分が持ち上がると思う。実際には変化しないものもあるが、この0.2ミリの変化を目で感じ取ることができないのであれば、潔く作業を中止する勇気を持とう。日常的な生活の中では、0.2ミリの違いを重視することは、あまりないかもしれないが、ことネックに関しては、この僅かな変化が全てともいうことができる。また、ネックを観察する時は、15フレット以上のハイ・ポジションは基準にはならない。なぜならば、元々の出荷時に、少しでもハイ・ポジションの音詰まりが起こらないように15フレット以上はリリーフをつけてフレット上面を落としてある(0〜0.4ミリ程度)ことが多いからである。また、ギターのネックは、常に動いているということを忘れてはいけない。ネックの状態は、チューニングを下げたり、フィンガーボード面を上向きにしたり下向きにするだけで変化する。従って、最終的なチェックには、ギターを正確にチューニングし、弾く時と同じ状態、つまり1弦側を下/6弦側を上にしてギターを立てた状態でチェックする必要がある。この状態で、フレットの最上面を結んだラインをチェックする。場合によっては、弦を直線の基準線として利用することもできる。この場合、まず第一に、弦を新しいものへと交換する。1日でも使用した弦は、既に基準線としての役割を担うことはできないと考えるべきである。新しい弦を張ったら、それをチューニングする。そして、ギターを弾く向きに構えた状態で、極力軽い力で1弦1フレットと1弦15フレットあたりを押さえ、7フレット位置あたりの弦とフレット上面とのすき間をチェックする。そのすき間が1弦のネックが順反っている量となる。すき間が0の時は、直線ではなく、逆反っている可能性が強いので注意が必要である。

 こんなことを書くと驚かれるかもしれないが、ギターのネック(フィンガーボード面)が完全な直線になることはあり得ない。先程の弦を使ったネック反りのチェック方法でも、1弦から6弦までの反り方が完全に一致することはない。また、一度順反ったネックは、トラスロッドを回すことで、完全に元の直線を取り戻すこともない。全ては、全体的な狂い(0.1〜0.4ミリ程度)を全体、もしくは目立たない場所へ分散させてやることで、狂いを感じさせない状態を作り出すことこそが、トラスロッドを使ったネック調整方法である。より正確なフィンガーボード面を求めるのであれば、リペア・ショップに行きファイリング等のリペアを行なう必要がある。

 一度回したトラスロッドを翌日チェックしてみると、状態が変化していることも多い。即効的な効果と合わせてチェックする習慣をつけよう。また、前回強くトラスロッドを閉めすぎたことで、ネックが逆方向へと反っている(逆反り)場合は、反時計回りに同じようにトラスロッド・ナットを回して調整する。トラスロッドによるテンションとは別に、ネック自体が逆反り方向へと曲がってゆく傾向のネックもある。この場合は、リペア・ショップに相談しよう。どうだろうか? 僅かなネックの状態の変化を的確に把握するためには、普段は使わない神経を集中させなくてはならないので、一度でやり切ってしまおうとはぜずに、じっくりと経験を積みながら練習していこう。

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その2 トラスロッド・ナットについて

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写真1

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neck2.gif 写真2

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写真3

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neck4.gif 写真4

 それでは、具体的な作業に入ることにしよう。一般的なアジャスタブル・トラスロッドでは、トラスロッドの片側はネック内で固定されており、もう片側にはトラスロッド・キャップと呼ばれる“ナット”が取りつけられている。要は、このナットを回すことでトラスロッドにテンションを与えるのである。それでは、次に幾つかのパターンについて具体的に説明しよう。

(1)写真1は、ギブソン・タイプのトラスロッド・ナット。このナットを回すためには、専用のトラスロッド・レンチを使用する(写真2)。また、リッケンバッカー、ギルド、B.C.リッチ等のギターにもこのタイプのトラスロッド・ナットが取りつけられているが、一回りサイズが小さいので、お互いの互換性はない。

(2)写真3は、一般的なフェンダー社のギター/ベースに多くみられるタイプ。このトラスロッド・ナットはネック・エンド部分から、大型のマイナス・ドライバーを使って回す(写真4)。多くのギターでは、トラスロッド・キャップの一部のみがボディやピックガードから露出しているだけなので、そのままでは十分な力を加えて回すことが難しい。その場合は、次の手順が必要となる。まず、弦がチューニングされた状態で(弦のテンションがかかった状態)でネックの状態を見極める。次に弦を一旦緩め、その時にネックの状態がどう変わるかを把握しておく。そして、ボディ/ネックを外し、ネック・エンド部分のトラスロッド・キャップを回してネックを調節する。この時には、将来的に弦のテンションが加わった状態を想像しながら作業を行なうことになる。このタイプのネックの作業を行なうためには、最低限以下の作業を的確にこなせるだけの技量が必要となる。まず、ボルト・オン・タイプのボディ/ネックを一旦外し、その後正確に元通りにジョイントすること。次に、ネックの状態を記憶すると同時に、フィンガーボード面を目視して、0.2ミリの範囲でネックの反りを見極めることが要求される。

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写真5

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写真6

(3)写真5は、1972〜83年にかけてのフェンダー・ギター/ベースに採用されていた、ナット側からトラスロッド・ナットをアジャストするタイプ。これは1/8インチの6画レンチを使用してブレット型のトラスロッド・ナットを回せばよい。

(4)写真6は、写真3の変形版であり、フラットトップ・ギター等に多くみられるタイプ。基本的には、ボディ/ネックはセット・ネック・ジョイントされており、ネック・エンド部分にトラスロッド・ナットが位置している。この場合、トラスロッド・ナットは大型の6角レンチを使って回すのだが、そのサイズはメーカーや生産国によって異なっている。ざっと見渡しただけでも、3/16インチ、5.0ミリ、7/32インチ、6.0ミリ、1/4インチ、といったバリエーションが見受けられる。

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その1 アジャスタブル・トラスロッドの概要

図A


図B

 現在手に入れることのできるギターの多くには、アジャスタブル・タイプのトラスロッドが内蔵されている。一般的なアジャスタブル・トラスロッドとは、ネックの中にスティール製の棒状の補強材が入っているタイプを指す。これは、弦のテンションによってネックがフィンガーボード側へと曲がって(反って)来るのに対して、トラスロッドを調整することで、ネックの指板側からグリップの方向へと強制的に逆向きのテンションを加える。その結果、2つのテンションを相殺することで、まっすぐに安定したネックの状態を作り出そうというものである。従って、バランスを保つためには、常に弦の張力を与えておくことが必要なことがお分かりだろう。

 トラスロッドが現在一般的なアジャスタブル・スタイルへと進化していく過程には、幾つもの異なるタイプが存在していた。ここで、他タイプのトラスロッドも簡単に説明しておこう。1800年代末後半に、ほぼ現在の形となったヨーロッパのガット・ギターや初期のマーティン社等のフラットトップ・ギターには、ガット弦(当時はシープ・ガット、つまり羊の腸がギター弦として使われていた)のテンションによってネックがフィンガーボード側へと反ってくるのを防ぐため、補強のためのエボニー製の棒をネックの中に内蔵するようになった。これがトラスロッドの始まりで、もちろん現在のように調整することはできない。このようなスタイルのトラスロッドは“ノンアジャスタブル・トラスロッド”と呼ばれている。現在でも一部のスティール・フラットトップ・ギターには、このタイプのトラスロッドが採用されていることがある。また、弦のテンションが比較的弱いナイロン・ギターでは、現在でもこのタイプが主流となる。マーティン社のスティール・ストリングスを使ったフラットトップでは、強度を上げるために断面がT型やロ型のスティール材を使用した金属製トラスロッドが、実に1985年まで採用されていた。もちろん、これらのトラスロッドは、ノンアジャスタブル・タイプである。

 現在のようなアジャスタブル・トラスロッドは、ごく初期のギブソン社で開発を行なっていたテッド・マクヒューが1920年代初頭に開発し、1923年にはパテントが認可されている。彼はまた、高さをアジャストすることのできる現在のアーチトップ・スタイルのブリッジを開発しており、ギブソン社の創設者オーヴィル・ギブソンのミュージシャン仲間であった人物としても知られている。

 一般的なアジャスタブル・トラスロッド・システムの構造は(図A)のようになっている。ネック内部には、湾曲させたスティール・バーがすき間なく埋め込まれている。弦のテンションによって、ネックがフィンガーボード側へと反ることに対して、トラスロッドを締めることにより、ネックのフィンガーボード側からグリップ側への向きにネックを強制的に曲げようと言うのである。両方のテンションが相殺されることで、ネックの状態がストレートになる。この構造からもお分かりのように、基本的にはアジャスタブル・トラスロッドは、フィンガーボード側へとネックが反る“順反り”を補正するためのものである。ネック自体の木取りやフィンガーボード対ネック材の伸縮率の違いなどから、稀にネックがフィンガーボード側からグリップ側へと反ってしまうこともある。こうした“逆反り”に対しては、殆ど効果を及ぼすことはできない。近年では、逆ぞりに対しても十分な効力を発揮することができるタイプのトラスロッドや、アルミニウム製のコの字型フレームの中にスティール製のアジャスタブル・トラスロッドを内蔵した“チャンネル・ロッド”と呼ばれるものなど、各社がそれぞれの特徴あるトラスロッド・システムを開発/採用している。

 マンドリンやバンジョー、古いヘフナー社のギターなどでは、トラスロッドは(図A)の様に湾曲させて内蔵されているのではなく、真っすぐなままの状態でネックに内蔵されていることがある(図B)。このようなトラスロッドもアジャスタブル・トラスロッドの一種類とよべるのだが、考え方として〜トラスロッド自体の強度でネック反りを防ぐ〜、〜ネックが反った時には、当然ネック内のトラスロッドも一緒に反っているので、トラスロッド・ナットを回してロッドを直線へと調整してやることができる〜といった考え方に基づいている。もうお分かりのとおり、やや考え方に無理があるのは否めないところであり、大きく反ったネックには多少効果を期待することができるものの、現代のように微妙な範囲を正確にアジャストすることは… 難しいと言わざるを得ない。

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