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メンテナンスガイド

その4 緊急時のアース対処法

 ロー・インピーダンス・ピックアップ・システムが組み込まれた楽器を除いた一般的なギター/ベースでは、ノイズを下げるために、弦をアース回路として使用してプレイヤーの体を使ってアースに落とす構造になっている。ギターの種類によっては、ブリッジやテイルピース部分にしっかりとアース線が取りつけてあるものも多いが、単に挟み込むように圧着しているだけのものもある。こういった構造のギターは、時間が経つとアース部分の接触が弱くなり、ノイズが大きくなってくることが起こる。エレクトリック・ギター/ベースのジーというノイズは、誰もが経験し、また好ましくないもの。今回は、楽器自体をカスタマイズしてノイズを下げるのではなく、楽器が本来備えているアース回路がちゃんと機能しているかのチェック、そして不測の事態を回避するための応急処置をお教えしよう。

 まず、ギターをアンプに接続する。次に、大きめの音量に設定して、蛍光灯などのノイズを 発しやすいものを近くに置きながらノイズの出方を確認してゆく。

 次の3つの状態のノイズ(この場合、シングルコイル特有の低いブーンというノイズではなく、高い音でジーとなる外来ノイズ)の量を比べてみよう。

(A)両手をギター/ベースから離した状態
(B)手で弦を押さえた状態
(C)手でギターに差し込んであるプラグの外側を強く握った状態
 3つともノイズの量が変わらないのであれば、その楽器は現状で組み込まれているアース回路がちゃんと機能している。従って、よりノイズを下げたいのであれば、新たなカスタマイズが必要となる。

 次に(A)に対して(B)のノイズが減っているようには聞こえない、そして(C)が一番ノイズが小さく感じられる場合。この時は、本来ギターに組み込まれたアース回路がちゃんと機能していない。その理由は、ギター内部のアース線が外れてしまっているのかもしれないし、ブリッジ〜アース間を結ぶべき線は比較的に外れやすいので、それが外れてしまったり、圧着されていたものがずれてしまった場合などが考えられる。これは、アース回路を点検しながらワイヤリングを正すことで、弦を押さえた時に(C)の状態にまで改善することができる。具体的な方法はボディ内部のワイヤリングに関わってくることなので、次回にゆずることにするが、現場でどうしてもそのギター/ベースを使いたい時の応急処置を記しておこう。ギター弦や半田線のような電気を通す金属線を使って、ブリッジとギターに差し込まれたプラグの外側(どこでもよい)とを強く結んでやる。これでノイズ量は(C)の状態まで落とすことができる。

 最後に(A)(B)(C)の順でノイズが減ってゆく場合。これは、一応アース回路は結線されているものの、経年変化やサビ等によって、アース回路(アース線)が完全には導通していない状態であることを示している。古いギターなどで時折見られるのだが、弦を押さえると少しはノイズが減ること、対象が古い楽器の場合が多いことなどから、壊れているという自覚がないまま、“古いギターは、ノイズが多い”と思い込んでいることもある。適切にアース回路をワイヤリングしなおしてやれば、弦を押さえた時に(C)の状態まではノイズ・レベルを下げることができる。応急処置に関しては、前記の項目と同じ技を使うことができる。

 エレクトリック・ギター/ベースのエレクトロニクスについては、一定の知識や簡単な技術が必要になるが、実際にはさほど難しいものではなく、十分に理解さえすれば危険度もそれほど高くはない。次の機会には、ある程度順を追ってギター・トーンを考えた上でのジャックやポット交換、コイル・タップ・スイッチなどの簡単なバリエーションの追加、そしてピックアップ交換の手順、簡単なエレクトロニクスのトラブル・シューティング等に関しても考えてみたい。

→ その1 電装系パーツ類が及ぼす影響 へ

→ 楽器の保管方法 へ

その3 その他各部のノイズ対処法


エレクトロニクス・パーツを洗浄する際は、他部分に洗浄剤が
かからないように注意しよう。

 ジャック・ガリの次あたりに多いのが、ヴォリューム/トーン・ポットやピックアップ・セレクタ(含スイッチ類)から出るノイズだろう。これも、各パーツの接点部分が腐食してきて接触不良を起こしているのである。これらのパーツは、ピックガードの下や、コントロール・プレートの中に取りつけられているので、まず手の届く場所まで露出させてやる必要がある。次に、エレクトロニクス・パーツ用の洗浄剤、アルコールなどで接点部分を洗浄する。場所によっては上記のメタル・ポリッシュを小量使ってもよい。

 ここで注意点を幾つか挙げておく。スプレー・タイプの洗浄剤は、ギターの他部分に悪影響を与えることがあるので、飛び散らないように最善の注意が必要となる。ギターの塗装が溶けてしまうことも、十分あり得る。ポット類の内部を洗浄する時に使う洗浄剤やリレー・クリーナーは、ポット内部のゴミを吹き飛ばしてくれる役割もある。したがって、他に飛び散らないようにポット自体をティッシュでくるむなど工夫して、ある程度の量を吹きつけてやる方がよい。アルコール系の成分を持つ洗浄剤は、ブラス・シャフトのポットには良好だが、アルミニウム・シャフトのポットには十分な注意が必要となる。あまり多く使用すると、ポットに致命的なダメージを与えてしまうことがある。

 今回は、半田付け作業には触れないが、エレクトリック・パーツを洗浄する時には、各接点に変な力がかかってはいないか、ちぎれそうになってはいないか、といったことを目で確認しておいて欲しい。

→ その4 緊急時のアース対処法 へ

その2 ジャック部のガリ・ノイズ対処法


(写真1)綿棒などを用い、ジャックの内側を磨いてみよう。

 エレクトリック・ギター/ベースのトラブルで一番多いのがジャック部分のガリ・ノイズ。これは、誰でも経験したことがあるだろう。そして、ギター・コードのプラグをガシガシと抜き差ししてやれば、多少のものならば収まる。これは、これとして立派な修理テクニックのひとつということができる。でも、いつ再発するかは分からないし、ヤバい時に限って症状は表れるもの。ガリ・ノイズの出るジャックは、時間のある時にメンテナンスしておこう。

 まず、ジャックからガリ・ノイズが発生する仕組みについて説明しておく。多数のギターは、1/4インチ径のアウトプット・ジャック/プラグで接続する規格になっており、内部では単純に2つの接点を結んでいるだけである。つまり、コード・プラグの先端の数ミリほどの飛び出した部分が接触する“ホット”部分と、その他のプラグ全体が接触している“コールド/アース”部分からなっている。この2箇所の金属部分が錆びることで、接触不良を起こしガリ・ノイズが生まれる。そのまま放っておけば、やがては音が出なくなってしまうこともある。ここで、ちょっとした秘密を教えよう。いま通常のモノラル・ジャックには、2つの接点があると述べた。ところがガリ・ノイズを起こすのは、2つの接点のうちアース側が殆どなのである。従って、メンテナンス手順は以下の通り。綿棒の先に金属磨き、ペースト状コンパウンド、サビ取りあたりをごく小量付け、入り口から1センチほどの間のジャック内側を磨く。できれば、ジャック自体を露出するようにジャック・プレート等を外した方がいいのだが、慣れればそのままの状態でも行なえる。注意点は、金属磨きなどを付け過ぎないこと、そして何も付けない綿棒で十分にカラ拭きしておくことである。できれば、きれいに仕上げるために小量のアルコールを付けて磨いてやれば更によい。作業はこれだけ、これで必要十分な効果が得られる(写真1)。

 時折、ジャックのアース部分を紙やすりを使って磨くといった大胆な話を聞くことがある。ジャック自体はブラスの上から保護や腐食防止の為にニッケル・メッキが施されている。紙やすりを使うとせっかくのニッケル・メッキが剥がれてしまいがちなので、おすすめはできない。またメッキ自体は意外と薄いので、古い楽器では既に長年のプラグの抜き差しによってメッキが剥がれてしまっていることもある。この場合は、迷うことなくアウトプット・ジャック自体を交換しよう。ジャックを交換する際に経験したことだが、古いジャックは音は出ていても、トーンが下がって聞こえるようになってしまっていることが往々にしてある。このあたりは好みの問題も絡んでくるので、電気的な劣化と音の悪化は一致しないと考えた方がよいという意見もあるが、個人的にはジャックやギター・ケーブルなどのギターの外側に出た電気信号(ギターの音そのもの)に関しては、極力劣化させないように心がけるべきだと思う。

 フラットトップ・ギターに多く使用されているエンド・ピン・ジャックと呼ばれているものは、今回のジャック・メンテナンスには当てはまらないので、またの機会にご説明しよう。

→ その3 その他各部のノイズ対処法 へ

その1 電装系パーツ類が及ぼす影響

 プレイヤー誌の読者の方は、エレクトリック・ギターやベースを使っている人が多いと思う。これらの楽器には一般的なアコースティック楽器に加えて、独自のエレクトロニクス(電装系パーツ類)が組み込まれている。多くのエレクトリック・ギターやベースに組み込まれているものは、とてもシンプルなパーツや、ワイヤリング・レイアウトで構成されている。それ故に個々のパーツがギター・トーンに及ぼす影響が大きいということにも繋がるのだが、一般的なエレクトリック・ギター/ベースに起こることが多い電気的なトラブルは共通したものが多い。ここでは、目にすることが多い典型的なトラブル・パターンと対処方法を説明してゆこうと思う。

→ その2 ジャック部のガリ・ノイズ対処法 へ

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